資産5,000万を築く裏で、私が妻を追い詰めていた話。――「正しい節約」が「正しい夫婦」を壊すとき

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はじめに:順風満帆に見える数字の裏側

「40代、普通の平社員。共働きで資産5,000万円を達成」

SNSやnoteでそう発信すると、多くの「スキ」や、ときには羨望の声をいただくことがあります。確かに、5,000万円という数字は、日本のマス層において一つの大きな区切りであり、将来への安心材料になることは間違いありません。

しかし、今だから告白させてください。 その数字を積み上げる過程で、私は一番大切にすべき家族との関係を、自ら壊しにかかっていました。

当時の私は、資産を1円でも多く、1日でも早く増やすことだけに執着する「数字の鬼」でした。家計を完璧にコントロールし、無駄を削ぎ落とすことこそが正義だと信じて疑わなかったのです。

その結果、何が起きたか。 家の中の空気は冷え切り、妻との会話は事務的な「数字の報告」だけになり、私が家に帰ると妻がスッと席を立つ。そんな「心の貧乏(プア)」な状態に陥っていました。

今回は、資産5,000万円を達成するよりもはるかに難しかった「夫婦の金銭感覚のすり合わせ」の記録を、私の恥ずかしい失敗談と共にさらけ出そうと思います。

資産形成を進めていく中で、気づかないうちに陥ってしまいがちなすれ違いや葛藤があると感じています。
ご自身の状況と照らし合わせながら、反面教師として参考にしていただけますと幸いです。


1. 妻の買い物への「監視」という名の暴力

喧嘩の火種は、いつも些細なことから始まりました。

仕事帰りに妻がスーパーで買ってきた、少し高い季節の果物。 週末、久しぶりに新調したという妻の数千円のブラウス。 それらを見るたびに、私の頭の中では自動的に「複利計算機」が動き出していました。

「それ、本当に今必要だった? 似たようなの持ってない?」 「果物なんて、特売の時だけでいいじゃないか」

私にとって、その数百円、数千円は単なる支出ではなく、「新NISAに回せば20年後には数倍になっているはずの貴重な軍資金」に見えていたのです。

妻は最初、「たまの贅沢だよ」「仕事頑張ったし」と笑って流そうとしてくれました。しかし、私のチェックは日に日に厳しくなっていきました。レシートを突き合わせては「今月の食費が予算を300円オーバーしている理由」を問い詰める私に、次第に妻の表情から笑顔が消えていきました。

私は「家族の将来のために言っているんだ」という正論の鎧をまとっていました。しかし、その正論は、日々の家事や育児、仕事を懸命にこなしている妻の「今」を否定する、ただの暴力でしかありませんでした。


2. 投資方針の押し付け――「効率」が「安心」を殺した日

資産形成が加速し、運用の知識が増えてくると、私はさらに傲慢になりました。

自分はインデックス投資や高配当株について勉強し、効率的なポートフォリオを組んでいる。一方で、慎重派の妻が「少しずつ現金も持っておきたい」「あまりリスクは取りたくない」と言うのを、私は「非効率だ」「機会損失だ」と切り捨ててしまったのです。

「投資なんてギャンブルでしょ?」

ある日、妻がこぼしたその言葉に、私は火がついたように怒りました。 「ギャンブルじゃない、統計に基づいた合理的な戦略なんだ。勉強不足なんだよ」

今思えば、本当に情けない。 妻が求めていたのは、投資の利回りではなく、不測の事態が起きても家族が路頭に迷わないという「安心感」でした。私は数字の正解(効率)を押し付けることで、彼女が抱いていた漠然とした不安を、さらに増幅させてしまっていたのです。

夫婦で同じ方向を向くべき資産形成が、いつの間にか「私の正解を妻に強要する場」へと変貌していました。


3. 子供の習い事――「未来の資産」か「今の経験」か

一番大きな衝突は、子供の習い事を巡る議論でした。

妻は「これを習わせたい」といろいろと提案してきました。対する私は、即座に月謝と、それを15年間積み立てた時のシミュレーションを頭の中で弾きました。

「塾に英語にスイミング……そんなにやらせてどうするんだ。教育費にお金をかけすぎると、将来の私たちの老後資金が削られる。結局、子供に迷惑をかけることになるんだぞ」

私の言い分は、論理的には破綻していなかったかもしれません。しかし、妻は涙を流しながらこう言いました。

「ねえ、5,000万円溜まった時に、家族がバラバラだったら、そのお金に何の意味があるの?」

その言葉に、私は言葉を失いました。 子供の成長は今この瞬間しかない。その貴重な「今」を削ってまで守ろうとしている「未来」に、誰の笑顔があるのか。私は、数字を守るために、家族の心を殺していたことにようやく気付かされたのです。


4. どん底から辿り着いた「3つの新ルール」

妻の涙を見て、私は自分の家計管理が根本的に間違っていたことを認めました。 そこから、数ヶ月かけて夫婦で話し合い、私たちは以下の3つのルールを導入しました。

① 「口出し無用」のサンクチュアリ予算

お互いのお小遣いだけでなく、生活費の中にも「ゆとり枠」を作りました。 「たとえ無駄に見えても、相手が笑顔になる買い物には一切口を出さない。」 これは数字上の効率を落とす決断でしたが、家の中の空気は劇的に軽くなりました。(徹底は出来ていませんが、常に意識しています。)

② 投資は「納得感」を優先する

妻の口座については、私が一切干渉しないことにしました。 彼女が自分で納得し、安心できる範囲で運用する。もし現金で持っておきたいなら、それも彼女の「安心コスト」として認める。 「夫婦別々の財布」と「共通の目標」を分けることで、投資が喧嘩の種になることはなくなりました。ちなみに新NISAについては、私は年初一括、妻は毎月積立と方針が異なります。私自身は長期的に見れば年初一括が正解だと確信しています。

③ 「思い出投資」枠の創設

子供の習い事や家族旅行は、資産形成とは別の「投資」として定義し直しました。 「今しか買えない価値」にお金を使うことは、将来の自分たちへの最高のプレゼントである。そう再定義したことで、教育費を払う際にも「もったいない」という感情が消え、応援する気持ちになれました。


結び:資産1億円を超えた今、思うこと

資産5,000万円という数字は、確かに大きな節目でした。 しかし、その数字を積み上げる過程で夫婦の信頼を崩してしまっては、本末転倒です。

皮肉なことに、私が「正論」を手放し、妻の感情や「今」を楽しむ予算を優先し始めてからの方が、我が家の資産形成は加速していきました。

心の余裕が生まれたことで、夫婦で「次はどう資産を育てようか」と前向きな作戦会議ができるようになったからです。

実はその後、私たちは念願だった世帯資産1億円を突破し、いわゆる「富裕層」の仲間入りをすることができました。

あの日、5,000万円を前に妻と大喧嘩し、どん底の空気の中で「何のために貯めているのか」を問い直した経験がなければ、今の1億円は絶対にあり得ませんでした。 資産形成は、家族というチームが同じ方向を向いて初めて、最大のパフォーマンスを発揮するものなのだと痛感しています。

もし今、家計管理でパートナーとギスギスしている方がいたら、一度「数字」の手を止めてみてください。 そして「二人でどんな未来を笑って過ごしたいか」を、美味しいコーヒーでも飲みながら話し合ってみてほしいのです。

私が試行錯誤の末に辿り着いた、「家族の平和」と「資産形成」を両立させる具体的な貯金・運用ルールについては、こちらの記事にすべてまとめています。私の失敗を、皆さんのショートカットに役立てていただければ幸いです。

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